石材の寸法と単位
石材業界では「尺(しゃく)」「寸(すん)」「分(ぶ)」「厘(りん)」「切(さい/才)」「石(こく)」といった伝統的な単位が今も使われます。ここでは意味と換算、実務での使い方を丁寧に解説します。

一切のイメージ図
なぜ業界で独自の単位が残っているのか
建築や墓石の分野では、昔から使われてきた尺貫法の名残が今も残っています。寸法を「尺・寸」で表す文化は、図面や職人の口伝えの中で長年使われてきた利便性と慣習から来ています。私たち長沼石材店でも現場で「○尺×○尺」と話すことはよくあることで、実務上いまだに実用的です。
基本の単位と換算
尺(しゃく)・寸(すん)
– 1尺 = 約30.303cm(0.30303m)。 – 1寸 = 1尺の10分の1 = 約3.0303cm。 図面や職人の寸法指定で「4尺×4尺」などと表記された場合は、メートル換算やセンチ換算して確認すると誤差が出にくくなります。
切(さい・または才)と石(こく)――体積の単位
石材の体積を示す単位として古くから使われるのが「切(さい/才)」です。これは尺の立方(1尺立方)を基準とします。
- 1切(1才)=(1尺)³ ≒ 0.02782639 m³(約27.826リットル)
- 10切(10才)=1石(コク)=約0.2782639 m³(約278.264リットル)
つまり「1尺の立方体」の体積を1切と呼び、10切が1石になります。なお、この「石(コク)」は米や酒の一石とは異なり、材積(木材・石材の容積)を示す単位です。
換算を覚える:実務でよく使う数字
実務で目安として覚えておくと便利な換算は次の通りです(小数点以下は目安)。
- 1尺 = 約0.30303 m(=約30.303 cm)
- 1切(1才) ≒ 0.02782639 m³ ≒ 27.826 リットル
- 1石(10才) ≒ 0.2782639 m³ ≒ 278.264 リットル
これらをもとに、現場での材料発注量やトラックの積載量の概算、搬入時の容積見積もりを行います。
現場での実用例:体積から重量を出す方法(具体例つき)
石材の重さを見積もるときは、まず体積(m³)を求め、石材の密度を乗じます。墓石に使われる花崗岩(御影石など)の密度は概ね 約2,700 kg/m³(= 2.7 t/m³) を目安にします。
例1:1切(1才)の重さの目安
1切(1尺立方)は体積が約0.02782639 m³です。密度2,700 kg/m³を掛けると:
0.02782639 m³ × 2,700 kg/m³ = 約75.13 kg
→ 1切(1才)あたり 約75kgが目安です。
例2:1石(10才)の重さの目安
1石(10切)=約0.2782639 m³。これに密度を掛けると:
0.2782639 m³ × 2,700 kg/m³ = 約751.31 kg
→ 1石(10才)あたり 約750kgが目安になります。
実務的な墓石一基の概算(例)
立て石(石塔)単体の目安として、仮に寸法を 縦1.5m × 幅0.6m × 厚さ0.4m とすると、体積は:
1.5 × 0.6 × 0.4 = 0.36 m³
0.36 m³ × 2,700 kg/m³ = 972 kg
→ この仕様の石塔は約972kg(0.97トン)となり、搬入方法・クレーン能力・運搬車両の確認が必要です。
※上の数値はあくまで目安です。石種(密度)や内部の空洞・加工形状により実重量は変わりますので、正確な重量は現物寸法で再計算してください。
運送(運賃)や倉庫計算での「才」使用例
運送業界では容積(体積)を基に運賃を算出することが多く、石材の世界では「才(切)」表示を見かけることがあります。例えば段ボール箱に「1.2才」と書かれている場合、それは容積が約 1.2 × 0.02782639 m³ ≒ 0.03339 m³(約33.4L) であることを示します。「1.2才?小さい子向けの商品かな?1.2才って何ヶ月だろう?」なんて考えたことがないでしょうか?個人の感覚と単位が異なるため、運賃照合時は必ずm³換算を確認しましょう。
施工・発注で気をつけるポイント(長沼石材店の実務目線)
- 寸法は図面と現地で二重チェック:尺表記→メートル換算で丸め誤差が生じやすいため、施工前に必ず現地実測を行います。
- 体積見積りは形状に注意:複雑な形状や中空構造は単純体積より軽くなる場合があります。最終的な重量はCADデータや実寸で確認を。
- 搬入経路とクレーン能力の確認を:例で示したように石塔1基で1トン近くになることは珍しくありません。搬入時の道路制限やクレーンの吊り上げ荷重を事前に確認します。
- 石種の密度差を把握:石材の種類(花崗岩・玄武岩など)によって密度は変化します。発注前に密度データを確認しましょう。
長沼石材店では、寸法・体積・重量の算出を図面段階で行い、搬入計画まで含めてご提案します。疑問点は遠慮なくご相談ください。
まとめ:単位を正しく理解して、安全で無駄のない施工を
「尺」「寸」「切(才)」「石(コク)」は過去から続く実務単位であり、現場運用には便利な面があります。ただし、設計・発注・搬入の各段階でメートル・kg換算を正しく行うことが、安全で無駄のない施工の要です。長沼石材店は、地域に根ざした経験を活かして、寸法単位の変換から搬入計画までトータルでサポートします。