こんにちは。高崎市金古町で100余年、お墓づくりのお手伝いをしております長沼石材店の5代目、長沼功一です。
2月も下旬になり、ようやく群馬名物の「からっ風」も少しずつ和らいできたでしょうか。それでも朝晩の冷え込みは厳しく、現場で石に触れると指先が痺れるような日もありますね。この時期になると、「春のお彼岸までにお墓をきれいにしたい」「新しく建てたいけれど、どんな石を選べばいいの?」というご相談が増えてきます。
お墓は、一生に一度あるかないかの大きな買い物です。「どの石も同じに見える」「高い石なら安心なの?」と不安に思う方も多いはず。今回は、一級石材施工技能士として現場に立つ私の視点から、墓石に使う石材の選び方を、忖度なしの本音でお伝えしようと思います。
なぜ「みかげ石」が選ばれるのか?まずは基本のお話
まず、お墓に使われる石のほとんどは「みかげ石(花崗岩)」です。たまに「大理石でお墓を作りたい」というご希望をいただくこともありますが、日本の屋外環境、特に冬の寒暖差が激しく夏の雷雨もきつい群馬では、大理石は風化しやすいため、あまりおすすめしていません。
みかげ石は非常に硬く、磨けば鏡のような艶が出ます。そして何より雨風に強い。一口に「みかげ石」と言っても、実は産地や種類によって性格が全く違うんです。詳しくは以前書いた記事「いわゆる『みかげ石』って何?」もご覧いただければと思いますが、まずは「お墓=みかげ石」が基本だと覚えておいてくださいね。
現場で重視する「耐久性」の正体は「吸水率」
私がお客様に石を提案する際、色や価格よりも先にチェックするのが「吸水率」です。これは石がどれだけ水を吸うかという数字。石は一見固い塊ですが、顕微鏡で見ると小さな穴が無数に開いています。そこから雨水を吸い込み、冬場にその水分が凍結して膨張すると、石の内部からヒビが入ったり、表面がザラついたりする原因になります。
一般的には、吸水率が0.2%以下の石が「良い石」の目安とされています。特に、高崎や前橋などの平野部は冬の夜間にグッと気温が下がりますから、水を吸いにくい石を選ぶことが、30年、50年経った時の美しさに直結するんです。
私の経験から:
昔の古いお墓を解体させていただく際、ボロボロに崩れてしまう石と、洗えば当時の艶が戻る石があります。その差はやはり、石自体の密度と吸水率なんです。目に見えない部分ですが、ここを疎かにすると後で後悔することになります。
国産石と輸入石、結局どっちがいいの?
これは一番多くいただく質問ですね。結論から言うと、「どちらが良い・悪いではなく、何を優先するか」です。
1. 国産石(真壁石・稲田石・庵治石など)
国産石の魅力は、何と言っても日本の風土への馴染みの良さです。茨城県産の「真壁石」などは、関東のお墓では定番中の定番。青みがかった上品な白さは、群馬の景色にもしっくり溶け込みます。価格は輸入石に比べて高めですが、長い年月を経ても「味」が出るのが国産石の良さですね。私も、先代(父)が建てた国産石のお墓をメンテナンスしに行くと、その耐久性の高さに改めて驚かされることがあります。
2. 輸入石(インド産・中国産など)
最近主流なのは、インド産や中国産の石です。特にインド産の黒みかげ石や濃いグレーの石は、驚くほど硬くて吸水率が低いものが多い。デザイン墓石を建てたい方や、重厚な雰囲気にしたい方にはインド産をよくおすすめします。中国産はコストパフォーマンスが良く、広大な敷地にお墓を建てる際の強い味方になってくれます。参考までに日本産の石と外国産の石の違いも併せて読んでみてください。
色と質感で決める「お墓の表情」
石の色はお墓の第一印象を決めます。大きく分けると「白系」「黒・グレー系」「赤・緑系」がありますが、最近の傾向をお話ししますね。
- 白・明るいグレー: 最も一般的で、清潔感があります。周囲のお墓とも調和しやすく、迷ったらこの系統が安心です。
- 黒・濃いグレー: 近年、非常に人気があります。高級感があり、文字に金箔を入れなくても視認性が高いのが特徴です。
- デザイン墓石: 最近は和型にこだわらず、洋型やオリジナルのデザイン墓石を選ばれる方も増えました。複数の石を組み合わせて、ご家族の個性を表現するのも素敵だと思います。
よく「黒い石は熱を持ちやすいから良くないって聞いたけど…」と心配される方がいますが、現代の施工技術(しっかりとした免震や通気)があれば、色によってお墓がダメになることはありません。黒い石塔と白い石塔どっちが良いのか、ご家族が「これだ」と思える色を選ぶのが一番の供養になると私は信じています。
【実録】私が「この石は使えない」と判断した時のこと
以前、あるお客様から「ネットで見た安い石で建ててほしい」というご相談をいただいたことがあります。調べてみると、その石は吸水率が非常に高く、かつて別の現場で数年後に茶色いシミ(錆)が出てしまった苦い経験のある種類でした。
「長沼さん、安ければ何でもいいんだよ」と仰るお客様に、私はこうお伝えしました。
「石を売るだけなら簡単です。でも、私は10年後にお客様がガッカリする姿を見たくありません。群馬の厳しい冬に、その石は耐えられないんです」
結局、少しだけ予算を調整していただき、耐久性の高い別の石を提案しました。完成から5年経った今、お墓参りでお会いするたびに「あの時、長沼さんの言うことを聞いてよかった。今でもピカピカだよ」と言っていただけます。この言葉を聞くために、私は石屋をやっているんだなと実感する瞬間です。
石選びと同じくらい大切な「見えないところ」の話
どれだけ良い石、高い石を選んでも、それを支える「基礎」が手抜きだったら、数年で傾いてしまいます。私のこだわりは、見えなくなってしまう基礎工事にこそ魂を込めることです。
高崎や前橋、安中など、傾斜地や地盤が緩い墓地もあります。一級石材施工技能士として、その土地の状況に合わせて鉄筋を組み、頑丈な基礎を打つ。石を選ぶのと同時に、その石を誰がどう積むのか。そこにも目を向けていただけたら嬉しいです。私たちの仕事については「石塔が出来るまでの流れ」で詳しく紹介しています。
まとめ:後悔しない石選びのために
お墓の石選びに「正解」はありません。でも、「納得」は必要です。
- 地域の気候(群馬の寒暖差)に耐えられる耐久性があるか
- ご家族が手を合わせたくなるような色や形か
- 予算とのバランスが取れているか
もし迷われたら、ぜひ一度、私たちの店に遊びに来てください。展示場には実物の石サンプルが並んでいます。写真やカタログでは分からない、石の冷たさ、重み、艶の深さを、ご自身の指先で確かめてほしいのです。お茶を飲みながら、「うちの場合はどうかな?」と気軽にお話ししましょう。
石を売るのではなく、ご家族の絆をつなぐお手伝いをすること。それが、5代目としての私の使命だと思っています。
高崎・前橋エリアのお墓のことは長沼石材店へ
創業百余年、5代目の私が責任を持って対応させていただきます。
小さなお困りごとでも、まずはお話を聞かせてください。
