7月が近づくと、群馬はもう真夏の顔になります。赤城おろしの風が止まって、朝から空気がじっとりと重い。高崎や前橋あたりでも、お墓参りに来るだけで汗ばんでしまうような日が続きますよね。
この時期になると、「そういえば去年より石が傾いた気がする」「親族とお墓の話をしたら、なんとなくぎこちなくなってしまった」という連絡が増えます。梅雨から夏にかけての雨と熱が、石や地盤のゆるみを加速させる季節でもあって、毎年「やっぱりこの時期か」と感じるんです。
今回は、私・長沼石材店5代目の長沼功一が、実際に現場で経験してきたトラブル事例をいくつかお伝えします。地震や地盤の問題、親族間の話し合い不足、そして施工前の打ち合わせの齟齬。どれも「もう少し早く気づいていれば」という後悔が残るものばかりです。参考にしていただけたら嬉しいです。
地震・地盤によるトラブル
震度3の揺れで竿石が傾いた
「群馬って地震少ないですよね」とよく言われます。確かに太平洋沿岸と比べれば揺れは少ないほうかもしれませんが、長野県境に近い西部や山沿いのエリアでは、体感できる揺れが来ることは珍しくありません。そして揺れの規模だけが問題ではないんですよ。
以前、高崎市内の寺院墓地で対応した事例です。「震度3くらいの揺れがあった翌朝、お参りに行ったら竿石が前に傾いていた」とご連絡をいただきました。現場に着いて触ってみると、台石との接合部にぽろぽろと劣化した目地材が入っているだけで、耐震金具はまったく使われていない状態でした。
建てられたのはおそらく昭和40〜50年代。当時は「石を重ねればそれなりに安定する」という考え方が普通でしたので、これ自体は珍しいことではないんです。ただ、長年の経年変化で目地材が砂のようになっていて、揺れの衝撃を吸収できなかった。ハンマーで軽く叩くと、ペチペチという乾いた音がして、「ああ、もう接着力がない」とすぐわかりました。
このケースでは、すべての石をいったん解体して接合部を清掃し、耐震金具とボンドを組み合わせて据え直しました。解体するときに石を持ち上げると、台石の上面に錆の染みが広がっていて、金具を使わずに重ねてきた年月がそのまま見えるようでした。
地震対策については群馬でのお墓の地震対策についての記事でも詳しく書いています。「うちは大丈夫だろう」と思っていても、昭和期に建てられたお墓は一度点検されることをおすすめします。
榛東村の斜面墓地で外柵がずれた
山沿いや斜面に墓地がある場合、地震よりも「地盤の動き」のほうが怖いことがあります。榛東村や吉岡町の一部には、斜面を切り開いた墓地があって、雨が続いた後に外柵がじわじわとずれてしまう、というご相談を何度か受けてきました。
高崎・前橋周辺の粘土質の地盤は、水を含むとぐっと柔らかくなります。そこに赤城おろしが吹き付ける冬がやってきて地面がカチカチに凍って、春になってゆっくり溶ける。この凍結と融解を何十年も繰り返すと、基礎の下の土が少しずつ押し出されていくんですね。気づいたときには外柵が外側に開いていた、という状態になっていることがあります。
こういうケースで怖いのは、表面だけ直しても同じことが繰り返されることです。地盤を掘り下げて、砕石をしっかり締め固めてからコンクリートを打つ、という基礎からのやり直しが必要になります。見えない部分こそ手を抜いてはいけない、と父の現場仕事を見ていて強く感じたことです。お墓が傾く理由と点検方法の記事も参考にしていただけると思います。
親族間のトラブル
従兄弟が「もう続けられない」と言い出して
地震や地盤の問題より、実はずっと多く現場で聞くのが、親族間でのトラブルです。お墓の話って、家族の中でもなかなか「さあ話し合いましょう」とはなりにくいものですよね。「長男が継ぐものだ」「本家がやるものだ」という暗黙の了解が、世代によって受け止め方がまったく違ってきている。
先日対応したケースでは、お客様の従兄弟の方がお墓を管理されていたのですが、高齢になって「体も動かなくなってきたし、もう続けられない」と言い出して、いざ話し合いをしてみると、管理費用をどちらが負担するか、将来的に誰が引き継ぐかが曖昧なままだったことが明らかになりました。さらに、霊園への届出上の使用者名義と、実際に管理をしていた方が異なっていたことも問題を複雑にしていました。
こういう問題は、石材店の私が直接解決できるものではありませんが、お墓の相続についてのページに基本的な考え方をまとめています。法的な手続きが必要な場合は司法書士や弁護士への相談が必要になりますが、「何から始めればいいかわからない」という段階でも、一度お声がけいただければ一緒に整理することはできます。
婚家のお墓と自分の親のお墓、両方ある
「夫の両親が眠るお墓と、私の親が眠るお墓が別々にある。将来どうしたらいいか」という相談も、決して珍しくありません。どちらも遠方にあったり、子供がいなかったりすると、管理が続けられるかどうか不安になりますよね。
正解は一つではなくて、ご家族の状況によってまったく異なります。一緒に埋葬できる霊園に移転する方法もありますし、それぞれを丁寧に墓じまいして、合葬墓や永代供養墓に移す方法もある。樹木葬・合葬墓・永代供養墓の違いと選び方の記事も書いていますので、選択肢の整理に使っていただければと思います。
私が大切にしているのは、「何が正しいか」より「このご家族にとって何が一番無理がないか」という視点です。売り込みたいわけじゃなくて、本当にそう思っているんです。
事前打ち合わせの齟齬によるトラブル
「完成したらイメージと全然違った」——私自身の失敗談
正直に話します。これは私自身がやってしまったことがあります。
文字の大きさと配置について、口頭で確認したつもりでいたのですが、お客様が想像されていたものと、私が図面に落としたものにずれがあって、施工後に「少し文字が大きすぎる気がします」というご意見をいただいたことがありました。
あのときは本当に悔しかったし、申し訳なかった。お墓は一度建てたらそう簡単に直せるものではないので。施工後に自分の図面を見直すと、確かに寸法の取り方が甘かった部分があって、「ああ、これは私の確認不足だった」と思いました。
それ以来、必ず実際の墓石の大きさに縮尺を合わせた印刷物をお持ちして、「文字はこのくらいの大きさで彫ります」ということを紙の上で確認していただいてから進めるようにしています。ご高齢のお客様には、より大きく印刷したものをお見せすることもあります。
石の色についても同じです。石の色・質・産地について書いた記事でも触れていますが、カタログやパソコン画面で見る色と、屋外の光の下で見る色はかなり違います。可能な限り実際の石のサンプルをお持ちして確認していただくようにしています。石材の選び方全般についてはこちらの記事にも詳しく書いていますので、参考にしていただければと思います。
共同使用のルールを決めずに建ててしまった
複数の家族がひとつのお墓を共同で使うケースがあります。兄弟が費用を出し合ってひとつのお墓を建てて、それぞれの家族が入れるようにしたい、という形です。
このとき、「誰がいつ掃除をするか」「管理費は誰が払うか」「将来墓じまいをするときはどうするか」という部分を最初に決めておかないと、後々揉めることになります。「まあ兄弟仲がいいから大丈夫だろう」という気持ちはよくわかるんです。ただ、仲がいいうちに決めておくほうが、ずっとうまくいく。
私のほうでは、打ち合わせの段階でこういった将来のことについても一緒に確認するようにしています。建墓の流れのページにも記載していますが、打ち合わせは「石を決めるだけ」の場ではなくて、「これからの管理を一緒に考える場」だと思っています。
トラブルを放置すると、どうなるか
「少し傾いているけど、すぐ倒れるわけじゃないだろう」という判断は、正直なところ難しいです。私が現場で見てきた感覚では、傾きは一度始まると加速しやすい。梅雨に水が入り込んで、夏の熱で膨張して、秋の雨でまた動く。このサイクルを繰り返すと、年々傾斜がきつくなっていくんです。
親族間のトラブルも似ていて、「今は忙しいから」と先延ばしにすると、次に話し合う機会がお葬式やご法事のときになってしまいます。感情が揺れているタイミングでの話し合いは、どうしてもうまくいかないことが多い。
状態が悪いまま年月が経ってしまうと、解体や改葬の費用や手間が余計にかかることもあります。将来的に墓じまいや改葬を考えている方は、お墓の引越し・移転についてのページもご覧いただけると、流れのイメージがつかみやすいと思います。
お参りのときに確認できるポイント
難しいことをしなくても、ちょっと意識するだけで気づけることがあります。
- お墓の正面から見て、竿石が前後左右に傾いていないか
- 外柵の石に、指でなぞってわかるような大きなヒビや隙間がないか
- 納骨室のフタ(カロートの蓋)がガタついたり、ズレたりしていないか
- 階段や踏み石が沈んで段差になっていないか
- 親族間で、掃除・管理費・将来の方針についてある程度話し合えているか
日常のお手入れについてはお墓の掃除の仕方のページを参考にしていただけます。「これは大丈夫なのかな」と迷ったときは、写真を撮ってLINEで送っていただくだけでも構いません。現地を見なければわからないこともありますが、写真でおおよその状況を把握することはできますので。
まとめ
地震や地盤のトラブル、親族間の話し合い不足、打ち合わせ不足からくる完成後の後悔。どれも「もう少し早く動いていれば」という思いが残るものです。
私が現場で感じているのは、「お墓のことは、話すタイミングが難しい」ということです。元気なうちに話すのは縁起が悪い気がするし、いざ必要になってからでは感情的になりやすい。だからこそ、日常のお参りの中でちょっとずつ確認して、気になったら早めに声をかけていただくのが、一番無理がないと思っています。
「うちの場合はどうだろう」と少しでも気になったら、気兼ねなくご連絡ください。高崎市金古町から、吉岡町・榛東村・前橋市・安中市・富岡市・渋川市など周辺地域まで、現地確認に伺います。費用の目安だけ知りたいという段階でも、もちろん構いません。
私たち長沼石材店の墓地改修の施工事例も、よろしければご覧ください。どんな工事をどんな流れでやっているか、雰囲気がつかめると思います。
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