庭石の大割りや撤去でお困りの方へ|セリ矢・板矢・ハンマードリルを使った石割りの仕組みを、高崎の老舗石材店が丁寧に解説します
お盆の時期になると、実家に帰ってきたご家族から「親父が遺した庭石、どうにかならないか」というご相談を多くいただきます。和風庭園に据えた大きな景石、墓地の通路を塞いでいる石、長年そのままになっていた庭石……。「業者に頼むにしても、あんな大きな石、どうやって動かすんだろう」と不思議に思っている方も多いんですよね。
今日は、私たちが現場で日常的に使っている「セリ矢」「板矢」「ハンマードリル」を使った石割りの仕組みを、できるだけわかりやすくお話ししたいと思います。
「石って、どうやって割るの?」というご質問、本当によく聞かれます
高崎市・前橋市・吉岡町・榛東村といった地域のお客様から、こんな声をよく聞きます。
- 「庭石を撤去したいが、重すぎてどうにもならない」
- 「墓地の改修で古い台石を割って処分したい」
- 「セリ矢って聞いたことあるけど、何をするものなの?」
- 「ハンマードリルで穴を開けると本当に割れるの?」
素朴だけど、核心をついた疑問だなといつも思います。石は叩けば割れるというものではなく、割れ方には「理屈」があります。その理屈さえわかれば、なぜプロに任せるべき場合があるのかも、自然と見えてきます。
ちなみに、石の種類そのものについては「みかげ石ってどんな石?」や「良い石とは?」で別途まとめていますので、石の性質から知りたい方はそちらもご覧ください。
石が割れる仕組み――「目」に沿って力を逃がす
石を割る仕組みを一言で言うと、「石の目に沿って、集中した力を加える」ことです。
みかげ石(花崗岩)のような結晶質の石には、結晶の並び方によって「目」と呼ばれる方向性があります。木材の木目に似たようなものだと思っていただければ。木を割るときも、木目に沿ってくさびを打てばパカッと割れますよね。石も基本的な原理は同じです。
問題は、その「目」が外からは見えないことです。私が石の前に立つとき、表面の模様や色むら、叩いたときの音、そして長年の現場勘で「おそらくこの方向に目がある」と読んでいきます。この読み間違いが、余計な方向への割れを生む。だから石割りは「力仕事」ではなく「読む仕事」なんです。
石の素材と産地についての違いはこちらの記事「石の色と質と産地でわかること|高崎市の5代目石工が30年の現場感覚で語ります」でも触れていますが、同じみかげ石でも産地によって硬さも目の方向も全然違います。
道具の話――セリ矢・板矢・ハンマードリルの役割
① ハンマードリルで「穴」を開ける
石割りの最初のステップは、石の表面に穴を開けることです。ここで使うのがハンマードリルです。
ドリルの刃先が「ガガガガッ」と石を叩き砕きながら掘り進んでいく。あの音と振動は、初めて体験した人は驚くと思います。私も若い頃、初めてハンマードリルを握ったとき、腕がしびれるほどの振動に面食らいました。今は慣れて体が自然と逃がしているけれど、一日中やると夕方には腕がじんじんしてますよ。
穴の深さと間隔が重要で、石の厚みや材質によって変えます。浅すぎれば力が逃げる。深すぎれば逆に割れにくくなる。この塩梅は、数値で説明するより現場で覚えるしかない感覚的な部分です。
② 板矢を穴に差し込む
ハンマードリルで開けた穴に、次に差し込むのが板矢(いたや)です。板矢は薄い鋼鉄製のくさびで、セリ矢本体を挟み込むように穴の中に入れます。2枚の板矢でセリ矢を両側から「ガイドするレール」のような役割を果たします。
板矢単体では何もしません。あくまで次のセリ矢を正確な方向に導くための部品です。
③ セリ矢を打ち込んで「力を集中」させる
板矢を差し込んだら、その間にセリ矢(先端がくさび形の鋼鉄製工具)を入れてハンマーで打ち込んでいきます。これが石割りの核心です。
複数の穴に同時にセリ矢を差し込み、端から順番に少しずつ打ち込んでいく。「トン、トン、トン」とリズムよく叩きながら、石の内部で何が起きているかを音で確認します。石が割れ始める直前、叩いた音のトーンがわずかに変わるんです。低く、少しこもった感じになる。その変化を体で感じたとき、「来るな」と思って構えます。
そして「パキッ」――石が静かに割れる瞬間です。爆発的な力ではなく、石が自分から息を吐くように割れていく。何百回と経験した今でも、この瞬間はちょっと気持ちがいい。
群馬の現場で感じる「地域差」の話
石割りに地域差があるの?と思う方もいるかもしれませんが、これが意外とあるんです。
高崎市金古町周辺は粘土質の土壌が多く、庭石が長年地面に据えられていると土の湿気をたっぷり含んでいます。湿気を含んだ石は内部に微細な亀裂が入りやすく、セリ矢を打ち込むと比較的「素直に」割れることが多い印象です。
一方、前橋市の一部の霊園では地盤が締まっていて排水性が良い区画があります。同じ石材でも、乾燥した状態で長期間据えられた石は若干粘り強く、穴の本数を増やして対応することもあります。
赤城おろしが吹き抜ける冬場は特別で、石が芯まで冷えた状態(氷点下になる日もありますよね)では割れ方が夏とは変わります。冷えた石は硬く締まっていて、セリ矢の打ち込み量が夏より多く必要なこともある。逆に言えば、石の「状態」を読むことが、道具の性能以上に大切なんです。
自分でできること、プロに任せるべきこと
ご自身で確認できること
まず現状を把握していただくのが第一歩です。石の大きさ・形・亀裂の有無を写真に撮っておいていただくと、お問い合わせの際にとても助かります。
石の表面を観察して「すでに亀裂が入っているかどうか」「傾きや沈みがあるかどうか」をチェックしてみてください。石塔(墓石)の場合は、石塔の主な構成を知っておくと、どの部分のことを指しているか伝えやすくなります。
プロにお任せいただきたい作業
以下の場合は、無理をせずにご相談ください。
- おおよそ100kgを超える庭石の撤去・大割り
- 墓地内の石材の加工(周囲の石塔を傷つけるリスクがあります)
- すでに亀裂が入っていて、意図しない方向に割れる可能性がある石
- 地中に深く根を張った状態の石(地面を掘り起こす必要があるケース)
特に墓地内での作業は、隣接する墓石への養生が欠かせません。割った石の破片が飛んで他家のお墓を傷つけてしまったら、取り返しがつきません。以前、別の業者さんが養生なしで作業して、隣の墓石の角を欠いてしまったという修理依頼を受けたことがあります。ヒヤッとした話です。
大割りに限らず、墓地まわりのトラブル事例については「お墓のトラブル事例集|地震・親族間の揉め事・打ち合わせ不足の失敗と解決方法」でも紹介しています。「こういうことが起きるんだ」と知っておくだけでも、失敗を避けやすくなりますよ。
放置するとどうなるか――「また今度」が高くつくこともある
「急がないし、もう少し様子を見よう」というお気持ち、よくわかります。私も無理に急かすつもりは全然ありません。ただ、いくつかの状況では放置が「じわじわと損」になることがあるので、正直にお伝えしておきますね。
庭石や墓石に亀裂が入っている場合、群馬の冬は要注意です。亀裂の中に入り込んだ水が氷点下で膨張する。「凍結破砕」と呼ばれる現象で、霜柱が強い年は意外な深さまで割れが進むことがあります。今ある亀裂が来春にはぐっと広がっていた、ということも珍しくない。
また、石が倒壊しそうな状況が進行していると、お墓参りの安全にも関わります。地震対策の観点からも、傾いている石塔は早めに対処するのが賢明です。「地震・凍結・経年劣化でお墓が傾く理由と点検の仕方」も参考にしてみてください。
ただし、今すぐ危険という状況でなければ、お盆・彼岸といったご供養のタイミングで一緒にご相談いただくのでも十分です。「すぐ決めなきゃ」という状況を除けば、じっくり考えていただいて構いません。
実は、割った石も「活かせる」場合がある
少し余談になりますが、大割りで出た石材が「処分一択」かというと、そうでもないことがあります。
わりとしっかりした石材であれば、割ったピースを墓地の敷石や縁石として転用できるケースもあります。あるいは、古い和風庭園の景石を割ってコンパクトにし、別の場所で使い続けたいというご要望もいただきます。
石を「使い続ける」という発想は、墓石の再研磨(磨き直し)という選択肢と同じ発想です。昭和のお墓を捨てずに活かす「再研磨」については「昭和のお墓を磨き直す「再研磨」という選択肢|捨てるより活かす、5代目石工の本音」で書いています。石は捨てる前に「まだ使えないか」を考えてみる価値がある素材だと、私は思っています。
長沼石材店の現場対応について
私たちが石割りの現場でいちばん時間をかけるのは、実は「下見」です。
石の表面を触り、叩き、亀裂の方向を確認し、どこに穴を開ければどの方向に割れるかを頭の中でシミュレーションする。「だいたいこんな感じかな」で始めると、思わぬところで割れてしまう。ひと手間かかるように見えて、この下見が全体の時間を短くします。
セリ矢・板矢のサイズ選定も大切で、石の硬さと穴の深さに合わせていくつかの径を使い分けています。細い穴に太いセリ矢を打ち込んでも効率が悪い。逆に穴が太すぎると板矢が遊んでしまう。道具の合わせ方も、経験から来る感覚です。
作業の様子は「作業風景のページ」や「石工事例」でも紹介しています。百聞は一見に如かずで、現場の雰囲気が少し伝わると思います。
また、石工という仕事の歴史や技術の変遷については「石材加工の変遷」でまとめています。セリ矢を使った石割りは、機械化が進んだ今も変わらない基本技術のひとつです。
ご相談はお気軽に――写真一枚からでも
「大げさな相談になるのでは」と遠慮される方もいますが、全くそんなことはありません。写真一枚送っていただくだけで、現地に伺う必要があるかどうか、概ねどんな作業になりそうかをお伝えできることが多いです。
「こんなことで相談してもいいの?」という内容でも、ぜひ気軽に声をかけてください。答えられることは何でもお答えします。
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