この記事でわかること
冬の冷え込みと氷が、お墓の目地や基礎にどう働くのか。
ご家族でできるお手入れと、石屋にお任せいただきたい線引き。
春のお彼岸にご親族をお迎えする前に、いつ、どこを見ておけば安心か。
こんにちは。高崎市金古町で五代続く長沼石材店の長沼功一です。
朝いちばんに墓地へ入ると、ひんやりとした空気が漂ってくる季節になってきました。一級石材施工技能士として現場に立って三十年ほどになりますが、このくらいの気温になると「ああ、今年も冬が来たな」と背筋が伸びるんですよ。
赤城おろしが抜ける早朝の墓地。霜柱を踏みしめながら、一石ずつ手で触れて確かめていきます。
春のお彼岸に「石がずれている」と驚かれる方が、毎年いらっしゃいます
年が明けて春のお彼岸が近づくと、お電話が増えてきます。外柵の継ぎ目に隙間ができている、拝石の下の土が盛り上がって段差になっている、花立のまわりの石が割れていた、水鉢の角が欠けている。そんなお話が、高崎市はもちろん、前橋市や吉岡町、榛東村のお客様からも届きます。
ご親族が集まる前にお掃除へ行かれて気づく方が多く、「親戚に傾いていると言われたらどうしよう」と、不安なお気持ちで来られるんですね。その不安、よくわかります。私も現場でお話を伺うたびに、胸が痛みます。
ただ、先にお伝えしておきたいのは、冬に石が傷むのは、ご家族がお墓を大事にしてこなかったからではない、ということです。冬季の気温と氷が、石にとってそれだけ厳しいのだと思っていただければ、と思います。
なぜ冬に傷むのか。氷と気温の話を、身近な道具でたどります
氷は、水より場所をとります
水を入れたペットボトルを冷凍庫に入れ忘れて、パンパンに膨らんでしまった経験はありませんか。あれと同じことが、お墓の目地の中でも起きています。水は凍ると体積がおよそ9%増えます。
経年で目地に髪の毛ほどのヒビが入ると、雨水や結露がそこへ入り込みます。夜に気温が氷点下まで下がると、中で水が凍って、石と石の隙間をじわじわと押し広げていくんです。花立の穴、線香立てのくぼみ、水鉢のまわりのように水が溜まりやすい場所は、特に影響を受けます。
御影石は硬い石ですから、「うちの石は大丈夫でしょう」とおっしゃる方もいます。石の違いについてはみかげ石ってどんな石?のページにまとめてありますので、あわせて読んでいただくと、石そのものの強さと、水が入り込んだときの弱さの両方が見えてくると思います。
霜柱は、地面の下で働く小さなスコップです
もうひとつの相手が霜柱です。高崎や前橋のあたりは、水を抱え込みやすい粘土質の土の墓地が少なくありません。そこへ冬の風が吹くと、土の中の水分が吸い上げられて、霜柱がぐんぐん伸びます。
イメージとしては、地面の下で無数の小さなスコップが、拝石や基礎を少しずつ持ち上げているようなものです。春に気温が上がって氷が解けると、持ち上げられていた石は一気に沈みます。この「持ち上がって沈む」を何年も繰り返すと、お墓全体が傾いたり、石の接合部が外れたりしてしまいます。私の経験では、榛名山や赤城山の裾野に近い墓地や、日当たりの悪い区画ほど、この傾向がはっきり出ますね。
冬の石は、素手で触ると指が張り付きそうなほど冷たいです。そんな日にコツコツと石を叩いて、音の変化で目地の浮きを確かめます。石をどう割り、どう動かすかは、セリ矢・板矢・ハンマードリルで石を割る仕組みに書いています。石の中で何が起きているのかを知っていただくと、冬の凍結がどれだけ力のかかる現象か、実感しやすいと思います。
地震や経年劣化も含めて、お墓が傾く理由を整理した記事が地震・凍結・経年劣化でお墓が傾く理由と点検の仕方です。凍結だけが原因ではない場合もあるので、気になる方は目を通してみてください。
駆け出しの頃の失敗と、先代の言葉
若い頃、冬の寒い日に目地を詰め直した現場がありました。見た目はきれいに仕上がって、自分では上出来だと思っていたんです。ところが春になって様子を見に行くと、同じ場所に細い線が入っていました。中の水分が抜けないまま蓋をしてしまったことが原因でした。
肩を落としている私に、先代が「石は冬のあいだは黙ってる。春になって正体を出すんだ」と言いました。当時は悔しさで聞き流しましたが、いまは現場でその言葉を思い出さない冬はありません。見た目をきれいにするだけでなく、水の逃げ道まで考える。それが私の仕事の芯になっています。
ご家族でできること、石屋に任せていただきたいこと
「今すぐやらなくても大丈夫」なことと、「こうなったらご相談ください」という境目を、正直にお伝えしますね。
- 水気を残さない: お掃除で水を使ったあとは、乾いたタオルで凹凸や花立のまわりを拭き上げてください。
- 花筒の水を抜く: しばらくお参りに来られない時期は、ステンレスの花筒の水を抜くか、持ち帰っておくと、凍って変形するのを防げます。
- 硬いもので擦らない: 金属タワシは石の表面に細かい傷をつけて、そこに水が溜まりやすくなります。やさしい道具での掃除は、お墓の掃除の仕方で紹介しています。
一方で、石のズレや目地の剥がれ、基礎の傾きは、ご自身で直そうとなさらないでください。墓石は小さな部材でも数十kgから数百kgあります。ご家族がケガをされては元も子もありません。ホームセンターのコーキング剤で表面だけ塞ぐと、中の水分が出ていけなくなって、次の冬にかえって大きく傷めることがあります。家族や親族での点検の考え方と、プロに頼む境目はお墓参りで家族が笑顔になるためにに詳しく書いてあります。
【写真での無料診断】
「目地が浮いている気がするけれど、今すぐ直すべき?」「遠方でなかなか見に行けない」。そんなときは、スマートフォンで気になる箇所を撮って、長沼石材店のLINEかメールでお送りください。現地へ伺う前に、おおよその状態をお伝えします。
当店の施工で大事にしていること
当店は、見た目を元に戻すだけの工事はしないようにしています。群馬の冬を前提にした施工を心がけています。
昔ながらのセメント目地は、寒暖差による石の伸び縮みについていけず、どうしても割れてきます。そのため当店では、水を通さず、揺れや温度変化にも追従する弾性の耐震コーキング材を使っています。石と石の接合部にはステンレス製の金具やダボピンも入れて、凍結の膨張や地震でもズレにくい構造にします。作業の様子は作業風景のページでご覧いただけます。
もうひとつは水はけです。水が溜まりやすい部分には逃げ道をつくり、納骨室の中で結露が溜まらないよう、空気の通り道も考えます。ご先祖様が眠る場所は、冬でも乾いた状態でいてほしいんですよ。
様子見を続けると、どうなるのか
| 状態 | 起きやすいこと | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 初期(目地のヒビ・小さな隙間) | 水が入り、冬の夜に凍って、隙間が年々広がる。 | 目地の打ち直しなど部分補修で対応できることが多い。 |
| 中期(石のズレ・欠け) | 氷の膨張で石そのものが割れ、隣の石を押し出す。 | 据え直しや、一部部材の再研磨・交換が必要になる。 |
| 末期(倒壊・基礎からの傾き) | 霜柱と水分で基礎が沈下し、お彼岸の時期に倒れる危険も出てくる。 | 解体して基礎からやり直す大きな工事になる。費用感はお墓の値段や費用は?が参考になります。 |
私がいちばん悲しいのは、春のお彼岸にご親族が集まったその日に、お墓が傾いているのが見つかることです。早く気づいて早く手を打つほうが、結果的にお財布にもお墓にもやさしいと、現場で何度も感じてきました。
相談したほうがいいかどうかの目安
次のうち、ひとつでも当てはまるようでしたら、寒さが本格化する前、あるいは春のお彼岸の前に、一度見せていただければと思います。
- 目地に白い粉が吹いている、またはセメントがボロボロ落ちている
- 花立の受け皿や水鉢の角に、髪の毛のような細いヒビがある
- 拝石の上に立つと、わずかにガタつきや傾きを感じる
- この3年ほど、目地の補修や点検をしていない
「このくらいのヒビで大丈夫だろうか」「工事をお願いするとどれくらいかかるのだろう」と迷ったときは、墓地改修・補修の施工事例をご覧いただくと、イメージしやすいかもしれません。年末のうちに済ませておきたい点検は年末のお墓掃除・点検で新年を迎える準備に、春のお彼岸に向けた掃除は春のお彼岸はいつ?高崎・前橋の気候に合わせたお墓掃除のコツにまとめています。
まとめ
赤城おろしが吹いて足元から冷えるような季節でも、ご先祖様を想うお気持ちは変わりません。お墓は石の構造物であると同時に、ご家族の歴史が宿る場所です。だからこそ、地元の気候と土をよく知る石屋が、責任をもってお手伝いしたいと思っています。
高崎市金古町を中心に、前橋市、吉岡町、榛東村、渋川市、安中市、富岡市、吾妻郡、桐生市など、近隣の皆様の小さなお悩みにも誠心誠意お応えします。「寒くなる前に一度見てほしい」「写真を見てアドバイスがほしい」と思われたら、どうぞお気軽にお声がけください。
高崎・前橋エリアのお墓のことは長沼石材店へ
創業百余年、地域に根ざした石材店として、お客様の心に寄り添う施工を心がけております。
お見積もりや現地確認は無料です。まずはお気軽にご相談ください。


